党内意思決定」カテゴリーアーカイブ

民主党が総合調査会を設置


■民主党の新しい機関:総合調査会

 2013年9月4日、民主党は「総合調査会」という新しい機関を設置しました。総合調査会は、憲法や外交、行財政改革などの重要課題について、民主党がどのような政策を打ち出していくのか検討する機関になる予定です。

■民主党の政策決定機関

 民主党の党規によると、現在、民主党の政策は「次の内閣」という機関で最終的に決定されます。総合調査会は「次の内閣」の下に置かれることになります。

 「次の内閣」の下には、もう一つ政策を立案する機関があります。「政策調査会」です。政策調査会長は「次の内閣」で「次の官房長官」になり、政策調査会の各部門の座長が、それぞれ「次の大臣」になります。

■総合調査会の意義

 総合調査会は政策調査会の上位にくる機関ではないようです。関係する役割分担をしっかりしないと、政策調査会と総合調査会で言っていることが違うということになってしまいます。そうなると、党論の統一という役割は担えなくなります。

 ただ、民主党は政権担当時に「交渉する相手が誰かわからない」と言われていました。総合調査会ができるとことで、「憲法ならこの相手」というように交渉相手が可視化したのはとてもいいことだと思います。


安倍内閣の与党コントロール


■自民党の党内手続きが省略されている

 2013年8月30日の日経新聞朝刊に『自民、政策決定に「異変」』という見出しで、自民党の意思決定の手続きが省略されていることを大きく報じました。

 例えば、社会保証制度プログラム法案の骨子を、政務調査会決定と総務会決定を省略し閣議決定しています。また、税制改正のプロセスである、政務調査会部会による省庁や業界に対するヒアリング→部会要求のまとめ→自民党税制調査会決定の流れのうち、ヒアリングと決定要求を省略しています。さらには、やはり政調部会で行う来年度予算の概算要求の取りまとめも、短期間のうちに終了しています。

 日経は、これらの状況から考えて、政府が党を強く指導している、いわゆる「政」高「党」低の状況が続いているとみているようです。

■党の方が強くなりやすい

 議院内閣制においては、政府と与党は一心同体です。政府と与党、どちらを欠いてもおかしなことになります。与党は、政府がなければ行政に関与できず、政府は、与党がなければ国会審議を進めることができないからです。

 ここで重要なのは、行政の行動に法律の裏付けが必要な関係上、国会に直接関与できる党のほうが圧倒的に強いということです。また、与党に所属している議員が一丸となって政府を支持するからこそ、政府=内閣は国会の信認を保てるのであって、与党議員の多くが内閣の動きに反対した場合、内閣の命運は簡単に尽きてしまいます。

 つまり、政府と党の関係は、「党」高「政」低になりやすいといえます。

■党をコントロールするにはどうすればよいか

 政府、というよりも首相が強いリーダーシップをもって政治をおこなうためにはどうすればいいでしょうか。自民党の場合は、党三役、つまり、幹事長、総務会長、政調会長を内閣に協力させることが第一歩です。

 現状をみてみると、幹事長こそ総裁選で対立候補だった石破茂さんが務めていますが、総務会長も野田聖子さんと政務調査会長の高市早苗さんは首相にとても近いといわれています。この事実は、総務会長と政調会長が党内手続きの要となる機関、総務会と政務調査会を司っているため、非常に重要です。政府が実現したい政策は、党内機関の了承という形で党の決定にしなければ、基本的にはできないからです。

 与党のコントロールは、首相が思い通りの政策を実行するうえで非常に重要です。日経の記事を見る限り、安倍内閣は自民党のコントロールに成功しているようです。


厚労委の30分・1


■3月19日、厚生労働委員会

 2013年3月19日、衆議院厚生労働委員会で審議が30分程度中断しました。読売新聞は次のように報じています。

19日の衆院厚生労働委員会で行われた法案採決の直前、民主党が「『次の内閣』で了承手続きが終わっていない」と主張し、30分間近く審議が中断した。

 同委では午後4時40分ごろまで、子ども向けワクチンの定期接種化などを盛り込んだ予防接種法改正案に関する討論が行われ、その後採決する段取りとなっていた。

読売:「法案採決の直前、民主「党内手続きまだ」…中断」より抜粋)

 いったい、何が起こったのでしょうか?

■動画で確認

 衆議院インターネット審議中継で、当日の厚生労働委員会の状況を確認してみました。

 動画の時間で言うと、6:57:10くらいからです。自民党の大久保三代代議士が賛成の討論を終えた直後、厚生労働委員長は理事を集めました。そこで、委員長は「討論はもう終わりになってしまう。この際、あえて討論の終局を宣言せず、速記を止めて民主党の手続きが終わるのを待つことにしたい」という内容の話をしています。

 どういうことでしょうか。

■委員会の手順

 委員会の審査は、法案の提案理由説明→質疑→討論→採決という流れで行います。討論といっても、議員間で意見のやり取りがあるわけではありません。議案に対し、賛成、あるいは反対の立場から自分の意見を述べることを討論と言います。

 今回の予防接種法改正案の場合、討論を申し出たのは自民党の大久保代議士のみでした。普通なら、大久保代議士の討論が終わったら、委員長が「以上で討論は終局いたしました。これより、採決に入ります。」と宣言し、採決することになります。

■討論が終わったら、すぐ採決しなければならない?

 冒頭の記事にもあるように、30分ほど委員会は中断しています。その間も動画は流れていて、委員長や厚生労働大臣がずーっと席に座って待っているのが確認できます。一旦休憩して、民主党の準備ができてから委員会を再開すれば良い気もしますが、おそらくできないのか、かなりめんどくさい手続きになるのでしょう。

 ここから、次のようなルールがあるのではないかと推測出来ます。

    ・討論が終局したら、直ちに採決しなければならない。
    ・いつでも休憩にできるわけではない。

 イレギュラーなことが起こると、ルールが見えてくるような気がします。他にも興味深い点があるので、また書きます。


民主党、意思決定過程を議論


 2013年1月16日現在。今朝の日経朝刊政治面に、民主党が党内意思決定について議論しているという評論がありました。この評論では、「(意思決定についての議論は)内向きの議論だ。もっとほかに話し合うことがある」という民主党議員の声で締めていて、あんまり評価されていない感じです。

 私はむしろ意思決定についての議論こそ、第一にしなければならないものだと思います。なぜなら、民主党の意思決定方法が確立しないことには、ほかの議題を話し合うとしても、なにがどうなったら民主党としての意見になるかが曖昧なままになってしまうからです。これでは、党としてのまとまりに欠けます。

 民主党に、自民党のような政務調査会で話し合ったことを更に総務会で決議する意思決定の仕組みがないことで、民主党議員が民主党としてまとまることが難しくなっていることは、参議院の石井予算委員長も指摘しています。この記事 は、石井予算委員長の講演がもとになっていて、民主党の意思決定過程の弱点がよくわかります。

 来月には、民主党の基本理念などを定める綱領の策定する党大会が開かれる予定です。党再生を目指すなら、来月までに意思決定過程をしっかり議論し、党大会で正式に決定できるようにするべきだと思います。


与党のコントロール手段としての党内手続き


 2012年12月28日現在。政府は通常国会の召集日を1月28日にする予定、という記事が今朝の日経朝刊に出ていました。28日にするなら、23日か29日がいいと思います。理由は、28日は仏滅ですが、23,29日は大安だからです。それだけです。

■与党のコントロール

 さて、安倍首相の国会運営が順調に進むかは、野党と与党を同時にコントロールできるかにかかっています。主義主張の違う野党の対応も大変ですが、与党の対応も大変です。与党をコントロールできなければ、なにもかも決まらないからです。

 党に所属する議員に賛成票を投じることを強制する「党議拘束」は、党をコントロールする手段のひとつです。自民党の場合は、総務会という機関で可決された法案に対して党議拘束がかかる仕組みになっています。また、総務会で可決されて初めて、法案が閣議決定され国会に提出されるのが慣例です。つまり、総務会の可決を得られない法案は、国会で審議されないことになります。

■党内手続き

 自民党内では、法案がこの総務会で審議されるよりも前から、法案について審議しています。政策分野別に分かれた政務調査会部会や、政務調査会審議会が議論の場となり、部会から総務会に至るまでの党内審議の手続きを「与党内審査」「党内手続き」と呼びます。

 与党内審査は、官僚が既存の法律や前例、関係団体の現状などをふまえて作成した法律に、初めて公式に政治家が意見をぶつける議論の場です。そのため、政治家が政策を主導する「政治主導」の文脈で語られることが多いです。

 同時に、党内の意見をまとめるための儀式の役割も担っています。特に総務会は全会一致なので、意見が違う議員にも、「みんなで決めたんだから、本会議で賛成しようよ」ということで、党議拘束をかける正当性が出てくるのだと思います。

 ちなみに、総務会で最後まで法案に反対する総務は、採決の前に反対である旨を発言してから席を外すことで、結果として全会一致にするそうです。

■総務会、政務調査会を活用する

 総務会や政務調査会で行われる党内手続きは、与党をコントロールするために重要です。そして、総務会の会長や、政務調査会の会長は幹事長と並んで「党三役」と呼ばれるほどの重要ポストです。

 安倍首相は、党内手続きを活用し、議論の行方をうまくコントロールすることで、首相が目指す政策に合った法案を与党議員に賛成させる必要があります。


政治主導とは4:効率化と「決める政治」


■効率化

 限られた時間を有効に使うため、無駄を省いて目的を確実に達成するということは、私たちにとって悪いことではありません。すすんで取り組むべきことですらあるかもしれません。

 私たちが日々スケジュールと目標達成に気を使っているように、政府もスケジュールに気を使っています。

■政府のスケジュール

 政府は年間100本程度の法案を提出しており、その大部分を通常国会の150〜250日で処理しなければなりません。通常国会の会期は150〜250日ですが、予算案は法案より先に審議しなければならない、という慣例により最初の60日程度は予算審議のために費やされます。また、日曜祝日はもちろん、土曜日もほぼ休みなので、さらに32日〜60日引かれます。ですから、法案全体の実質的な審議可能日数は58〜140日となります。

 ひとつの法案につき、委員会を通過するのに必要な日数は、最低でも2日です。それに本会議採決を加えて3日。さらに、日本は二院制をとっているため、2倍して6日。委員会を省略しない場合、一つの法案を処理するのに最短でも6日はかかります。仮に通常国会で提出する法案が100本あったとすると、すべての法案を成立させるには、のべ600日かかることになります。

 本会議での採決は、一日で複数の法案を扱います。また、委員会の数は30ほどあるので、すべての委員会にまんべんなく法案が付託された場合、ひとつの委員会で処理する法案は4本程度になります。したがって、すべての法案が最短で審議・採決された場合、4本×6日=24日、24日ですべての法案が処理できます。あれ、意外と楽勝な数字になりました。

 ここで出した数字には、2つの前提があります。ひとつは「野党が(賛成という意味ではなく)審議に協力的であること」。そして、もうひとつは、「与党が政府提出法案に賛成すること」という前提です。与党内で事前に合意を得ずに国会で法案を審議したら、時間も足りないでしょうが、法案成立の目処が立つかどうかすら怪しいです。

■与党が反対した場合

 2005年の郵政解散のもとになった郵政民営化法案は、与党内審査をしたことはしました。この法案には根強い反対があり、与党内審査の最終ステージである自民党総務会は苦しい決定をします。法案の国会提出だけを了承する、というものです。これで法案はなんとか国会に提出されました。

 しかし、法案の国会提出後も、自民党では修正案の審査が行われます。それほど反対派は強硬だったのです。結局、修正案はなかなか合意を得られず、自民党総務会は多数決で修正案を了承するところまで追い込まれました。自民党の与党内審査では全会一致で物事を決めるのが慣例になっているので、これは大変なことでした。与党内での強行採決が行われたようなものです。

 郵政民営化法案の修正案は5票差で衆議院を通過しましたが、参議院では17票差で否決されてしまいました。ここから、当時の小泉首相は衆議院を解散して大勝利。296議席を獲得します。そして、民営化の時期を半年延長した郵政民営化法案を国会に再提出し、衆参両院で可決され、やっと成立しました。

 与党できちんと了承されていない法案を成立させるのが、いかに大変かということがわかります。

■「決める政治」のための効率化、結果としての形骸化

 この例は極端ですが、こういう波乱を減らすために、官僚は根回しをし、与党で事前に法案を検討してしまうのです。スケジュールを確実にこなすための、効率化と言えます。これは悪いこととは言い切れません。政府として責任ある行政をするには、根拠となる法律が確実に成立することが不可欠だからです。

 責任ある行政、つまり「決める政治」を行うため、法案の成立を確実にしようとすればするほど、与党内審査で与党の意思をがっちり固めようとします。与党が賛成でまとまっていればいるほど、数において劣る野党にはなすすべがなくなり、国会は諸々の審議過程を消化するだけの場所となります。

 効率化と「決める政治」、どちらも大切です。ただ、それらの言葉と政治主導という言葉は、国会の形骸化という点で、時に相反することがあるようです。

参考文献:大山礼子『日本の国会』(岩波新書)


政治主導とは3:与党内審査


 自民党政権のとき、国会議員は国会提出前に法案を審議していました。自由民主党審査、あるいは単に与党審査と呼ばれていたのがそれです。

■政務調査会部会→政務調査会審議会→総務会

 官僚が作成した法案は、作成した省庁の決定を経て、自民党の政務調査会部会という機関でまず話し合われます。部会は内閣部会、経済産業部会というように分野ごとに存在し、関係する法案について審議しました。

 この審議には官僚も力を入れていて、その法案を主管する課の課長をはじめとして、幹部職員がガンガン説明、根回ししていきます。あまりに根回ししすぎて、90年代までには部会に上がってくる時点で自民党の意に添わない部分がなくなるくらいに自民党の意向を読み切っていたと言われています。

 法案が部会を無事に通過すると、政務調査会審議会に議論の場を移します。特に、部会で賛否両論になり、「部会長一任」という形で通過した法案はここで実質的な審議が行われます。

 審議会を通過すると、法案は与党審査最後の関門である総務会にかけられます。法案が総務会決定すると、法案は閣議決定され、国会に提出されるという流れになりました。

 自民党政権下においては、このように国会以前の段階で法案審議が行われていました。ちょっと気になるのは、90年代後半の自民党はほとんど他党と連立を組んで政権を維持していたことです。例えば、公明党はどのように事前審査をしていたのかに興味があります。また、政権についた当初、政「策」調査会を廃止してしまった民主党ではどのように与党内審査を行っているのかにも関心があります。

■官僚主導?それとも政治主導?

 官僚が政策決定過程を牛耳っていることが官僚主導の政治なのだとすると、国会や与党内審査の場面で国会議員の説明にエネルギーを割いている自民党政権時代の官僚の姿は、官僚主導にあてはまらないような気がします。

 とすると、その官僚主導の対になる言葉である政治主導とはいったいなんなのでしょうか。政治主導というからには、国会議員が政策決定過程をリードすることになるはずです。そして、国会議員がリードする機会は、国会としてすでに存在しています。どうして、国会が活用されないのでしょうか。その理由は、「効率化」と「決める政治」にあります。

続きます。


法案の作成過程と与党


 内閣提出法案を作成するのは、各省庁です。各省庁の担当課が作成にあたることから始まります。

 担当課では法律に関係する団体、議員、他省庁と協議しながら法案を作成していきます。最終的に内閣法制局が認め、閣議によって全会一致で決定されれば、法案を国会に提出することができます。

 自民党政権のときは、この間に自民党内部の政務調査会、総務会の審議や決定を経ることで与党による公的な干渉の余地をもっていました。民主党政権においてどうなってるのかは、よくわかりません。民主党にも政”策”調査会という組織があるのですが、民主党政権成立後しばらくは廃止されていました。

 国会が審議が儀式となってしまい、実質的な審議がなされないとすると、国民の代表である国会議員が法案について議論する場は与党審査しかないように思えます。民主党がどのように法案作成に関わっているのか、少し興味があります。